●ボードゲームの選び方

新型コロナウイルスによる休校が続いています。自宅待機生活を余儀なくされている我が家の4人の小中学生ですが・・・チャンス!とばかりに、毎日朝から晩までめっちゃ楽しそうに遊びまくっています。
休校が決まって一か月半を過ぎましたが、退屈することなく、次々と色んな遊びを発展させていて、「遊び上手だな~」と改めて感心しています。

中2になった長男を含め全員、勉強はほぼやってないのですが、毎日あまりに楽しそうに過ごしているので、(あと本もかなり読んでるし、手伝いもしてくれるので) 「ま、いっか。」となっています(笑)。 
今の状況は捉え方によっては、このブログでずっと書いてきた、“遊び力=考える力のある子”や、
“本好きな子”を育てるチャンスと成り得るのかな~と思っています。

ただ我が家のように、遊び仲間(きょうだい)が多く、自宅周辺に外遊びできる環境があることは稀だと思います。「ユーチューブ動画とかテレビゲームばかりやりたがって、制限するとだらだらしてるから、勉強や読書をさせようとしてるけど、それは断固としてやりたがらなくて…はあ…」みたいになっている保護者の方も多いのでは、と推測します。

そんな方には改めて、ボードゲームをお勧めします。 “家族で”、そして“自宅で”、楽しめるのがボードゲームの強みです。もうすぐ始まる連休に向けて、購入を検討してみてはいかがでしょうか?

   ☆「ボードゲームって…ナニ?」という方はこちら→ ボードゲームをしてみませんか
   ☆二年ほど前に、ボードゲームの取材を受けました→ 学習塾のボードゲームタイムから


◆ボードゲームの選び方・購入の仕方◆

普段の授業で扱うボードゲームは、①25分以内に終わる、②低学年の子も最初から楽しめる、という二点を条件にして選んでいます。ただ、5・6年生を集めて実施している“本格ボードゲーム大会”で
扱うものは条件を外しています。ご家庭で購入する場合は、“本格ボードゲーム”の方がお勧めです。

大人も楽しめる本格的なボードゲームの方が、同じメンバーで繰り返し遊ぶのには向いています。
最初は難しく感じても、遊べば遊ぶほど、戦略を考えることが面白くなってくるはずです。推奨年齢が、“10歳~”とか“12歳~”とか書かれているゲームでも、家なら一緒にプレイしながら少しずつルールを覚えればよいので、記載された年齢より2歳~4歳くらい小さくても大丈夫です。子どもは覚えるの早いです。(ただしプレイ時間が90分を超える“重量級ゲームは避けた方が無難です。)

今、ボードゲームの数はとにかく多いです。大人向けは尚更です。効率の良い探し方を紹介します。 
ネット上では、様々な人やお店が、様々なボードゲームをお勧めしています。(私も上記の取材でリストを挙げています) 紹介記事を読むと、どれも面白そうです。迷います。そんなときに、初心者が頼るべきは…そう、ランキングです。昔は、ランキングが信頼できる総合サイトが日本になく、英語サイトを苦労して読んでいたものです(涙)。…が、ボードゲームがずいぶん普及した今、ついに日本にも、決定版と言ってよいサイトが誕生しました! 初心者に優しいそのサイトの名は…“ボドゲーマ”です!

こちらをクリック!→ ボドゲーマの“お気に入りボードゲームランキングトップ50”

基本的に、初心者が楽しめるゲームが中心になっているのもこのランキングの良いところ。これを
上から順にチェックしていくのが、最も簡単で間違いない、“ボードゲームの選び方”だと思います。(上記した、“プレイ時間”と“推奨年齢”に加えて、“プレイ人数”に注目してください。3・4人家族なら
4人向け、それ以上なら人数に対応したゲームを選ぶとよいでしょう。)

更に言うと、上位の3つ、1位:カタン、2位:宝石の煌めき、3位:カルカソンヌ、どれも未経験、という方は、この中から選ぶと良いと思います。(順位は2020年4月現在) どれも家族で繰り返し遊べる鉄板のゲームです。個人的に最も好きなのは、“宝石の煌めき”。20年間ずっと定番ゲームとして評価が定着しているカタン・カルカソンヌに、発表後わずか5年程度で並んでいるところに、その実力が表れています。単純なシステムのわりに値段は高めなのですが、それだけの価値があるゲームだと思います。

トップ50のうち、教室でよく遊んでいるのは、6位のディクシット、7位のニムト、10位のブロックス、14位の髑髏と薔薇、19位のハゲタカ、31位のお邪魔者、34位のワードバスケット、41位のインカの黄金。
(本ブログでの紹介記事はこちら→ ニムトハゲタカお邪魔者ワードバスケットキッズ)
本格ボードゲーム大会では、カタン・宝石の煌めき・カルカソンヌの他に、8位のパンデミック、29位の世界の七不思議、38位の海底探検、42位のキングドミノなども遊んでます。
自分では未経験ながら、家族で遊ぶと楽しそうだな~と目をつけているのが、9位のラブレター、30位のワイナリーの四季、46位のダイスフォージです。

候補となるボードゲームを2つか3つほど選んだら、「ボードゲーム 〇〇〇」で検索して、購入可能かどうかチェックしてください。ボードゲームは品切れになることがけっこう多いので、1つに絞る前にチェックしておかないと悲しい思いをします。(経験者は語る。笑) 候補のゲームが購入可能なら、「ボードゲーム 〇〇〇 中古」で検索して、安く買えないかチェックするのもありだと思います。私は
半数程度のゲームを中古で購入していますが、商品状態などで後悔したことはありません。なかなか候補を絞り切れない場合は、更に検索して、遊んだ人のプレイレポートを読むと、詳細がわかって判断材料になると思います(個人ブログにレポートを書いてる人がたっくさんいます)。

選び方・購入の仕方は以上です。 …ですが最後に、トップ50に入ってないのが不思議なくらい面白いゲームがいくつかあるので紹介させてください! 主観で選ぶと選びきれないので、①教室生の人気ナンバー1ゲーム、②我が家での人気ナンバー1ゲームの二つを紹介します。

①ROOM25(下の写真の左)・・・本格ボードゲーム大会で、5・6年生のリピート希望率が最も高いゲームです。基本的には協力型の脱出ゲームですが、全員が正体を隠して裏切り者ありで遊んだり、チーム戦でバトルしたり、いくつかの遊び方ができ、お得感があります。ただし、テーマや雰囲気は、あまり家族向けとは言えない気がします。大人なら眉をひそめそうなアクションもあります。「ここで裏切って
“即死部屋”に押し出し~!ドッカーン!」というような。が、子どもは逆にそこが楽しいようで、男子も女子も、わーきゃー言って盛り上がってます。大人と子どものギャップがよくわかるゲームです。
ボードゲームを選ぶ際は、親(大人)の目線だけに偏らないように注意した方が良さそうです。

②ナビゲーター(上の写真の右)・・・教室から時々ボードゲームを持ち帰って、家族で遊ぶのですが、教室ではいつも“時間”と“初めての子が楽しめるか”を気にしながらプレイしているところがあるので、家ではつい、長~く難し~いゲームを選びがちな私。とはいえ、1年生もいるので、そこまで重いゲームはできません。このナビゲーターは重量級の入門編、という感じのレベルです。とにかくゲームシステムが素晴らしい! 多様な勝ち筋があり自由度が高いわりに、手番でやることが選びやすく、テンポよくゲームが進むので、最初から最後までだれることなく、架空の世界に入り込んで楽しめます。既に10回以上やってますが、いまだに人気がある我が家のヒット作。そろそろ重量級に挑戦してみたい、というボードゲーマー家族にお勧めです。

以上、長文にお付き合いありがとうございました~♪ 皆様ぜひ、実りある自宅待機生活を!

●17人とのお別れ、5人目との出会い。

 今日で三学期の授業が全て終了しました。新型ウイルスの件で色々と気を揉みましたが、保護者の皆様のご協力もあり、3月も何とか予定通りに授業を行うことができました。ありがとうございました。

卒業していく6年生たちを、しっかりした形で送り出すことができ、ホッとしています。今年の6年生は、例年よりも人数が多く(17名が最後まで通ってくれました)、低学年から見ていた子も多いので(8名が1年生の頃から通ってくれました)、寂しい想いも大きいです。が、卒業時の皆の姿には、賢さと頼もしさを強く感じ、誇らしかったです。優秀な皆のこれからが、すごく楽しみです。長い間、ありがとう!

プライベートでは、2月に大きな出会いがありました。 長男(13)・長女(10)・次男(8)・次女(7)に続いて、三男が生まれました。 土曜日の夜、助産婦さんと一緒に、自宅で、家族全員で、新しい命を迎え入れることができました。 まさか自分が5人のパパになるとは…我ながら意外すぎて笑ってしまいます。

子ども達が赤ちゃんをすごく可愛がって、面倒を見てくれて、助かってます。
おむつ替えたり、寝かしつけたり、家事を手伝ったり、それぞれが進んでやってくれて、最初だけかと思ってましたが、産後一か月がたった今も、すごく戦力になってくれます。いつのまにか4人とも、ずいぶん優しく頼もしく育ってくれて、こちらも誇らしいです。

  

●算数つまづきポイント解説〈4年生〉

《4年生の算数つまづきポイントは、“わり算の筆算”と、“単位換算”。高学年に備えましょう》

5年生になると、“割合”の単元の理解に苦戦する子が続出します。個人的には、「公立小学校って、なんで割合を、こんなにややこしい形で教えるの?」と疑問なのですが(詳細は、次回5年生の解説の際に書きます)、とはいえスムーズに理解できるに越したことはないので、4年生のうちに、その下準備をしっかりやっておきたいところです。

下準備①:“わり算の筆算”をしっかりできるようにしておきましょう

5年生の一学期に、“小数÷小数”の筆算を習います。どちらをどちらで割るか、立式が難しいので、そこに集中できるようにしておきたいところです。整数の筆算が苦手なままだと、小数の筆算もミス続出→ “立式の間違い”と“筆算の間違い”がランダムに出現→ 頭がパンクして「わからん~!」・・・となるケースが多いです。「筆算は問題ないけど、立式をたまに間違える」ということであれば、落ち着いて苦手に対峙することが可能になります。

「わり算の筆算をスムーズにこなせるかどうか」は、これまでの学習内容の定着度を測るバロメーターになります。わり算の筆算がしっかりできていれば、「たし算・ひき算・かけ算の筆算について、復習することは特にない」と言えます。苦戦しているようなら、復習の良いチャンスです。わり算の筆算の良いところは、どこでつまづいているかを分析することによって、必要な復習単元を絞り込むことができる点です。この分析作業は、本人や小学校の先生まかせにすると難しい場合も多いため、保護者の方が手伝ってあげるとよいと思います。

もしお子さんが、わり算の筆算に苦戦しているようなら、苦戦の原因となっている箇所を、横でよ~く観察してみてください。どのあたりを復習すればいいのか、たし算が怪しいのか、それともひき算か、繰上りか繰り下がりか、九九の暗記が怪しいのか、かけ算の筆算の仕方がわかってないのか、等々、きちんと分析して絞り込むことが大切です。原因をハッキリさせて、そこだけ集中的に復習すれば、成果が上がりやすいはずです。

下準備②:これまで教わってきた“単位換算“について、総まとめしておきましょう。

“単位”についての学習は2年生の一学期からスタートします。習ったその時に理解させ定着させるのが、難しい単元だと思います。割合と同様に「この教え方じゃつまづくのも当然だろう…」とか「そもそも単位ってそんなに大事? 入試にもほぼ出ないし…。実生活で使わない単位も多いし…」とか、疑問が多々あるのですが、ではなぜ、4年生に、“単位換算についての総まとめ”をオススメするかと言うと、単位についての知識が曖昧だと、(わり算の筆算と同様に)割合の理解に支障をきたすからです。

割合理解の基本となる、「2500円の0.1倍は?0.01倍は?」といった質問にサッと答えることができない5年生がけっこういます。つまづきの大きな原因として、“小数絡みの単位換算”があると、私は考えています。4年生後半に学習する、「0.1m=10cm」や「0.01m=1cm」といった内容は、「1m=100cm」がしっかりイメージできている子にとっては、0.1倍や0.01倍の意味理解の助けになるものだと思います。ところが「1m=100cm」が怪しい子にとっては、混乱の元でしかありません。(なかにはこれも暗記すべきものと勘違いしてる子もいます) 実感しやすい長さの単位ならまだよい方で、忘却の彼方にあったdLで「0.1dL=10mL」などと説明されると、混乱はますます深まります。実際はそれほど難しいわけではない0.1倍や0.01倍の意味理解が、単位を苦手にしている子にとっては、すっごく難しいものに豹変してしまうのです。

「単位はややこしい」と感じている子は多いと思いますが、2・3年時に扱う、長さ・かさ・重さの単位は、それぞれ単発で学習しています。相互の関連が整理されていないため、記憶が定着しにくいのです。まとめて一気に復習すると、意外とカンタンです。先ほど「単位って…大事?」と書きましたが、(相互の関連を整理できる4年生にとっては)それほど難しいものでもないので、さらっと覚えて苦手意識を克服してしまいましょう。 私の教え方を紹介します。

「1mって何cm?そう、100cmやね。自分の身長とかで考えれば10cmとか1000cmはおかしいってわかるよね。じゃあ1cmって何mm?そう、10mm。定規見ればわかるね。次。1Lって何dL?10dL?100dL?これけっこうわからんくなるよね。(1Lのペットボトルに10分の1だけ水を入れ)これくらいが1dLって覚えとくといいよ。じゃあ1Lって何dL?そう、正解は10dL。(次に500mLのペットボトルを見せ)じゃあ1dLって何mL?そう、100mL。500mLの5分の1くらいやろ?実はね、センチって100分の1って意味で、デシは10分の1って意味なんよね。だから1m=100cmで、1L=10dL。センチはできとったけ、デシだけ覚えればいいよ。単位そんなとこかな。 あ、あとね~、キロってなんかでっかいイメージあるやろ? キロは1000倍って意味。だから1km=1000m、1kL=1000L、1kg=1000g、全部いっしょ。それからミリは小さいイメージあるよね。ミリは1000分の1。だから1m=1000mm、1L=1000mL、1g=1000mg、これも全部いっしょ。デシだけ覚えれば、あとはほぼ1000やね。これで終わり~。カンタンやろ?」

ポイントは「単位ややこしい。覚えきれん」という意識の払拭です。この後いくつか問題をやらせてみて、「ほらできた、カンタンやろ?」と自信をつけさせれば、混沌としていた頭がスッキリするはずです。 各単位の持つ意味を効率的に暗記できる方法もあります(インターネットで、“単位・キロキロ”、もしくは“単位・キハダマグロ”、で検索するとヒットします)。これらの暗記法の良い点は、早い時期に覚えてしまえば2・3年生時のつまづきを回避できるところだと思います。 私の教え方のような、実感と結び付けながら整理する方法の良い点は、(上記の暗記法では対応しづらい)“面積や体積の単位換算”にも対応できるところだと思います。

●Happy New Year 2020

新年あけましておめでとうございます。 

2010年にスタートし、ゆっくりじっくり、スローペース更新を10年続けてきた、
こちらのホームページですが、これまで利用してきた“プチ・ホームページ”が
サービスの提供を終了するため、新しいサイトに移転することになりました。
(アドレス↑がkoiku.pupu.jpとなっていれば、新しいサイトです。)

デザインは、旧サイトのものとほぼ同じです。内容も変えていません。
ただ、写真をクリックで拡大できなかったり、リンクが切れていたり、と
いうことがあると思われます。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。
(ブログ記事一覧のリンクも切れています。現在、復旧作業中です。)

また、それに伴い、旧メールアドレス(koiku@bab.petit.cc)も使用停止と
なります。新しいメールアドレスは、taki@kfy.biglobe.ne.jp です。
(右上のメールフォームから送信して頂ければ、新アドレスに届きます。)

それでは、2020年も、よろしくお願い致します。

●算数つまづきポイント解説〈3年生〉

《3年生の算数つまづきポイントは、“わり算”。 しっかり理解するには時間がかかります》

小学校では、3年生から“わり算”の学習が始まります。
ご承知の通り、わり算は難しいです。どういう場面で、なぜ、わり算を使うのか、子どもに質問されて「え、それは・・・」と言葉に詰まってしまった、という話はよく聞きます。大人でも、理解を改めて問われると、自信が持てない人は多いのではないでしょうか。

仮にそこで、「こうだからこうだよ」と上手く説明できたとしても、子どもがすんなり理解できるとは限りません。 どれだけわかりやすく教えても、子どもの方に、“受けた説明を理解できるだけの理解力”が備わっていなければ、その場しのぎの“わかったふり”で終わりです。どれだけ上手に種をまいても、土が固く貧弱であれば、芽は出ません。

わり算の意味を、しっかりと理解するのには(それだけの理解力を得るのには)、時間がかかります。
3年生から習い始めるわり算ですが、私から見て「わり算の意味をしっかり理解して使いこなせている」と思える3年生は稀です。典型題なら解ける、そういう子は沢山います。でも“しっかりと腑に落ちている”わけではないので、応用が利かないのです。何度も書いてることですが、典型題が“できている”からといって、“わかっている”とは言えないのです。

4年生の後半になるに従って、少しずつ腑に落ちてくる子が増えてきます。「できれば5年生の6月くらいまでに…」、私はいつもそう思いながら指導しています。 理由の一つは、いわゆる“10歳の壁”で、これ以降は新たな思考回路の作成が難しくなることを、経験から実感しているからです。もう一つは、この時期から小学校で、“小数÷小数”を習い始めるからです。整数同士のわり算が理解できていない子にとって、小数同士のわり算は混乱の元でしかありません。ここまで少しずつ進んでいた“わり算の意味理解”も、ここで滞り、混乱してしまうケースが目立ちます。その場合、6年で“分数÷分数”に進むことで、混乱はますます深まります。5・6年生の“割合”でつまづく子は沢山いますが、わり算の意味が表面上にしか理解できないまま高学年に突入してしまった場合、つまづきは確実になります。

学び舎こいくでは1年生にも、わり算を使う問題を出しています。実際には絵で考えるため、わり算を知らないまま、÷という記号を使わないまま解いていくのですが、それを2年生、3年生と、レベルを上げながら繰り返していき、わり算の理解に必要な視覚イメージを強化していきます。しかし、1年生から始めても、上記したように4年後半くらいにやっと、ということが多いです。それぐらい、わり算を(応用が利くレベルまで)しっかりと理解する、というのは難しいことなのです。

私自身も、集団塾で算数指導をしているときは、それほど時間がかかると思ってませんでした。独立して、“絵で解く文章題”を使って、子ども達の理解の程度が、より詳細に見えるようになって、初めてわかってきたのです。この、“わり算の意味理解にかかる時間の長さ”は、私にとって驚きの事実でした。たし算・ひき算・かけ算とは全くレベルが違うのです。しかし、納得の事実でもありました。“典型題だけは解ける子=それを応用できない子”は、「え?なんでこれをこれでわった?」とか「え?ここはわり算すればいいじゃん」ということが非常に多く、集団塾で指導していた当時、その壁を超えるのが非常に難しかったからです。

「どう教えたら、わり算の意味を理解してもらえるだろうか」 算数指導のプロとして、様々な工夫をし、それが実ることもありました。が、なかなか実らず苦戦することも、多々ありました。苦戦の理由が、当時の私の指導力不足にあることは事実です。が、どれだけ上手に種をまいても、固く貧弱な土には芽が出ない、というのもまた揺るがぬ事実です。その経験から、現在は、多少雑な種のまき方であっても、しっかり芽を出せる“豊かな土壌つくり”に挑戦しています。しっかりとした“考える力”さえ育てば、(少々時間はかかったとしても)“わり算の壁”も、楽々と乗り越えていけるはずです。

“豊かな土壌つくり”のために、保護者の果たすべき役割は、とても大きいと思います。そのことについては、このブログでも様々な角度から触れているつもりです。参考にしてください。お子さんがわり算を理解できないとき、「私の教え方が悪いのかしら…」と考えて教え方を工夫する、そのこと自体はよいことだと思いますが、どう教えるか(いかに種をまくか)は、“豊かな土壌つくり”に比べれば、些末な問題と言ってしまってよいと思います。わり算の理解には時間がかかるものですから、悩まず暗くならず、焦らず明るく、土壌つくりに励んでいただければと思います。

さて、前提をお伝えしたうえで、ここから先は、“わり算の教え方のポイント”について書いていきます。どう教えるかは、些末な問題ではありますが、やはり要領を得ない教え方で混乱させてしまうよりは、わかりやすく教えてあげた方がいいのは間違いないですからね。

わり算の意味は(福岡市で使用している教科書に準じた場合)、3つあります。
3年1学期の“はじめての計算”という単元で、①から③の順に紹介されます。
①1人分の数をもとめる計算
「クッキーが12こあります。3人で同じ数ずつ分けると、1人分は何こになりますか。」
②何人に分けられるかをもとめる計算
「クッキーが12こあります。1人に3こずつ分けると、何人にわけられますか。」
③何倍かをもとめる計算
「クッキーが12こあります。パイは3こあります。クッキーの数はパイの数の何倍ですか。」

わり算の教え方については、様々な意見があり、教科書によって微妙に異なります。例えば、上記の教え方について、専門家Aさんは、「①から③を一単元で教えると混乱するから、まず①を理解させてから②に進み、②が理解できたら③、というふうにしっかり分けて教えるべき」と言い、専門家Bさんは、「①から③に分けることで混乱する。①は□×3=12、②は3×□=12、③は3×□=12、すべてかけ算の逆なんだから、分けずに同じものとして教えるべき」と言います。正しいのはどちらでしょうか?

一つはっきりと言えるのは、「小学校の先生は、程度の差こそあれ教科書に準じて教えるので、家庭でも教科書に準じた教え方に統一した方が、教わる方はわかりやすい」ということです。お子さんが「宿題がわからない」と言ってきたとき、それがわり算であれば特に、独自の教え方は避け、教科書を参考にするとよいと思います。私個人の意見としては、前半(3・4年生)はAさん方式を重視して、後半(5・6年生)はBさん方式を重視して教えるとよい、と考えています。それぞれの式を絵図化していくと、

①は、12個を3人で分けるので、□□□□/□□□□/□□□□  12÷3=4 で、4個。
②は、12個を3個ずつ分けるので、□□□/□□□/□□□/□□□  12÷3=4 で、4人。
③は、12個は3個の何倍かなので、□□□/□□□/□□□/□□□  12÷3=4 で、4倍。

となり、①と②は明らかに違います(②と③は同じ)。思考が視覚イメージで為されることを考慮すると、スタートからBさんの意見を重視した教え方をしても、子ども達の理解が追い付かないと思います。理解が進めば、“わり算はかけ算の逆の関係”のイメージが定着してきますから、そこでBさんの意見を重視した教え方にシフトしていけば、高学年の“割合”で、小数や分数のわり算を行う時も、かけ算の逆、と考えることができ、スムーズに理解が進むはずです。

ちょっと話が難しくなってきましたね。やはりわり算は難しいです。ただ、そんな難しいわり算を習いたての子ども達がどうやってクリアしているか、①②③の3つの意味を、どうやって頭の中で整理しながら理解しているか、に注目すると・・・ ①を習って「ふむふむ…わかる気がする」、②を習って「ん?なんかわかるようなわからんような…まぁとりあえずわっとけばいいんやね」、③を習って、「はいはい、わっとけばいいんでしょ」・・・おそらくほとんどの子が、こんな感じだと思われます(笑)。 「とりあえずわっといたら…ぜんぶ正解だった、できた!」 (できてるけど…わかってないよね…というか最後の方、考えてすらないよね…) つまり、ほとんどの子が「3つの意味を頭の中で整理しながら理解してはいない」と思われます(笑)。

この後、“あまりのあるわり算”を学んで、“わり算の筆算”を学んで、その過程で少しずつ、(相応の理解力が備わっている子は)理解していくものと思われます。教室で見ていると、子ども達が理解しやすい“わり算の意味”は、①の考え方(等分除)です。②の考え方(包含除)の理解に、時間がかかる子が多いです。しかし上に図示したように、②と③は共通しており、先々、“割合”の理解に繋げるためにも、②の理解はとても重要です。ですから、ご家庭で教える機会があれば、②の考え方を強調していただくとよいと思います。その際、教科書の文言通りに、「これは“何人に分けられるかをもとめる計算”だから…」と説明してもよいのですが、オススメは以下のような説明の仕方です。

「わり算には、“わける”という意味以外に、“いくつ入っているか調べる”という意味があるらしいよ。12個の中に3個はいくつ入ってる?」 「え、えっと…」 「1つは入るよね。2つは?」 「入る」 「3つは?」 「さざんが…入る」 「4つは?」 「さんし…入る。ぴったり!」 「そう、5つは入んないね」 「ということは…4人にわけられるのか」 「せいか~い!やるじゃん♪」

いくつ入るかを考えるときに、「2つだと3+3=6個、3つだと3+3+3=9個…」と、たし算で考える子もいますし、「1つ入ったら12-3=9個残り、2つ入ったら9-3=6個残り…」と、ひき算で考える子もいます。これをバツとしてしまう先生が多いのは残念なところ。たし算やひき算の繰り返しでも答えが出せたのならそれで「せいか~い!」とすべきです。その上で、「たし算の繰り返しをカンタンにやっちゃえる裏ワザがあって、それが九九の暗記(かけ算)なんだよ」と話を続けると、+-×÷が別個に存在するのではなく、繋がっていることが意識できてよいと思います。

この教え方であれば、かけ算の逆、という認識もしやすいですし、③の理解(ひいては割合の理解)にも繋がりやすいと思います。更に、“あまりのあるわり算”や、“筆算手順の意味”の理解にも、役立つこと間違いなしです。機会がありましたら、使ってみてください。

●算数つまづきポイント解説〈2年生〉

《2年生の算数つまづきポイントは、“大きな数”。 筆算のやらせすぎには注意。ゆっくり徐々に。》

小学校では、2年生から“大きな数”の学習が始まります。
2桁+1桁、2桁-1桁、2桁+2桁、2桁-2桁、これらについて考えていくのですが、最初からいきなり筆算させるのではなく、“10の固まり”を用いることで、子ども達が実感しやすい説明がなされます。
(教科書では、10本の棒が束になったイラストなどが用いられることが多いようです)
37+4であれば、⑩⑩⑩ ①①①①① ①① と ①①①① という形に表すことで、7+4の応用となり、
43-5であれば、⑩⑩⑩⑩ ①①① と ①①①①① という形に表すことで、13-5の応用となります。
多少時間がかかったとしても、1年生で学習したことを応用しながらよく考え、正しい答えを導き出すことが求められます。(第1ステップ)

その後(他の単元をいくつか挟んだ後)、筆算の学習が始まります。ここで初めて、子ども達は“数字を縦に並べて計算する手法”を習います。上記したような2桁のたし算とひき算を、速く正確にできるようになるまで、繰り返し練習します。(第2ステップ)

この過程に、“算数つまづきポイント”が存在するのですが、つまづきを起こす真の原因は、前回1年生の記事で書いたことと同様です。そう、「第1ステップが未だ曖昧で深い認識に至ってないにも関わらず、第2ステップの練習を徹底反復し過ぎること」です。「第2ステップのやり過ぎ・やらされ過ぎ」により、本来なら、ゆっくりと徐々にでも、深度を深めていくはずであった第1ステップの理解(理解しようとする脳の働き)が、途絶えてしまうのです。

もちろん、2年生全員がそうなる訳ではありません。“筆算の意味”の説明も、最初は実感を伴えるように、イラスト付きで丁寧に行われますから、“1年生の学習内容”と“第1ステップ”を深い理解と共に終えている子は、そこで「なるほど~」と意味を理解したうえで、筆算練習に入ることができます。そして、練習を重ねる中で、その意味の理解を更に強化していきます。

しかし、こうなる子は稀です。年齢的に、理解のスピードには大きな個人差があります。更に、保護者も先生も気づいていないケースがほとんどですが、「すでに(1年生のときに)“最初の致命的な算数つまづき”が起きている」子どもが多数います。1年生後半の“さくらんぼ計算”のやり過ぎなどで、具体物の世界から断絶されてしまっているのです。 “大きな数”の学習内容をしっかりと理解していくためには「20までの数字の和・差について、実感を伴ったかたちで、深く理解している」ことが必須条件となります。しかし、この条件をクリアしている子は(大人が思ってる以上に)少ないと思われます。

繰り上がりや繰り下がりについて、実感を伴った深い理解ができていないので、筆算しても計算ミスが沢山でます。練習しない時期が少しあると、すぐにやり方を忘れます。2年生も後半に入ると、2桁だけでなく、3桁の数で筆算練習が始まりますので、混乱はますます深まります。担任の先生も保護者も、何とかしてあげたくて筆算練習の量を増やしますが、その対策は意味を成しません。徹底して反復させれば、その場では正解数が増えテストの点数も上向くかもしれませんが、深い理解からはますます遠ざかっているのです。「反復練習で(実のところわかってないけど)できるようにさせられてる」だけです。真の問題は解決していません。隠蔽されただけであり、危機状態は深まっているのです。長い目で見ると、むしろ害、と言える間違った対応だと思います。

本来、ここで筆算練習はいったんストップすべきです。もう一度、具体物の世界に立ち戻り、指や絵を使って数え、考えることから始め、20までの数字の理解に時間を費やすべきです。その後、上記した第1ステップの理解をゆっくり徐々に深めて、それが確認できたら、また筆算練習を再開すればよいのです。時間のかかる方法に思われますが、深い理解に至るまでは、時間が必要なのです。これが王道ですし、「意味も分からず反復させられる時間、つまり無駄に費やす時間がない」という意味でも、実は長い目で見れば、一番の近道でもあるのです。

しかし、「小学校において、そういう対応が為されることは、まずない」と言ってよいでしょう。ですから、保護者の果たすべき役割は重要です。一段落前に書いたような対応がベストだと思いますが、できない場合も多いと思います。それなら少なくとも、筆算練習の負担を減らしてあげるような努力をしてもらえると助かります。宿題でやるべき筆算を、なくしたり減らしたりすべく、担任の先生に交渉してください(上手な交渉方法は私に聞いてください)。そこを変えられない場合は、本人の負担が減るような声がけをお願いします(これも私に聞いていただければ状況に応じてアドバイスいたします)。

第1ステップの理解をいかにして促進するか、ですが、これについては保護者があまり熱心に働きかけすぎると、本人のペースで、“ゆっくり徐々に”理解することを阻害してしまいますので、時間が解決するのを待つ、という姿勢でも良いと思います。苦手にあまりフォーカスしすぎず、それにより自信を失ってしまうことがないように、本人が楽しく日々を送れるような接し方をしてもらえれば、それでよいと思います。信じて待つことが肝要です。(もちろん教室では、絵を使った理解の促進を図っています)

“ただ待ってるだけ”は苦しい、という方は、生活の中で具体物を数える機会を意識して作るといいと思います。しかし“大きな数”を具体物で、となると、場面が限定されるはずです。「公園でドングリを沢山いっしょに拾いまくって、数えてみよう、となって10ずつ固まりにして数えて、そこから~個をお友達にあげると残りは…」な~んて機会を多く作れるとよいのですが、なかなか難しいと思います。

“大きな数の固まり”に実際に触れる機会の少なさを考えると、最も使えるのは、“おこづかい”や、“おかいもの”ということになると思います。例えばうちは、二週間に一回、“おこづかいの日”があり、1年生の次女には20円、2年生の次男には30円、4年生の長女には50円をあげてます。(お手伝いをサボり過ぎた場合もらえないこともあり。笑) うちは周りにお金が使える場所がないので、こ~んな少額でも貯まっていくことが多いようで、何かあるたびに財布を引っ繰り返して、10・20・30…と嬉しそうに数えています。“おかいもの”についても、自分の買い物(滅多にないから超真剣)はもちろん、妻の買い物に付き合うことも多いので、そのたびに、「いくら払ったからおつりは…」といったようなことを、年齢に応じて、妻と会話しながら理解をしていってるようです。自分のお金を自分で管理させることは、 (他の様々な教育的効果に加え)算数の学習としても効果があるように思います。お勧めです。

教室で見ていると、筆算学習をすでに終わらせていて、2桁・3桁の筆算は普通にできているのに、“大きな数”をきちんと数えられない子がけっこういます。10・20・30…90・100、まではいいのですが、その次を110・120、とできず、…90・100・200・300としてしまうのです(900・1000、の次も同様です)。これでは「大きな数の基本中の基本がわかってない」と言わざるを得ません。機会があったら、このあたりをチェックしてみると、第2ステップに進んでよい状態かどうかの判断材料になると思います。