●読書について③ 本好きな子にするための“こいく文庫”

ここまでの“読書について”の記事で、“読書の大切さ”について触れてきました。
ただ、「読書が大切なのはわかるけど、どういう本を選んでいいかわからない」という方も多いのでは。
とにかく興味の赴くままに読み進めていけば、そのうち「これは!」という一冊に必ず出会えると思いますが、そもそも本を読む機会が少ない子だと、出会いのチャンスを逃し続け…で、いつのまにか「本はあんまり好きじゃない」。よくある話ですね。
ということで少しでも有意義な読書体験ができるように、こちらのブログで、私が選んだオススメ本を
“こいく文庫”と(勝手に)称して、月に二冊ずつくらい紹介していきたいと思います。
内容は、①子ども向けの児童書、②保護者向けの育児書・教育書 です。

自分で教室を始めようとしたとき、算数でも国語でも、対症療法的な指導ではなく、根本からの改善を図るような指導、学力の土台となる力をつける指導をしよう、と決意しました。具体的には“考える力”
と“本を楽しむ力”、この二つの力をつける指導です。ただ、“本を楽しむ力”の指導者は私ではありません。先達が残してくれた、数々の素晴らしい本たちが指導者です。私は色々な指導者を自分の目で見比べて、“最良の指導者”を紹介する役目。本をこよなく愛する私ですから、これまで子ども達に
“考えることの楽しさ”を伝えてきたのと同じように、“本を読むことの楽しさ”も伝えていけるはずです。
ただ、紹介するからには厳選して絞り込みたい。ということで、本当はもっと早く紹介をスタートしたかったのですが、オススメ本選びに二年半を費やしてしまいました。読みましたよ~、かなり。きつかったけど子ども達のために頑張りました。というのはウソで、私にとっては楽しすぎる仕事(?)でした。

本は私にとって(国語の成績…なんて狭い話ではなく)、 “人生を豊かにしてくれるもの”であり、“自分
を成長させてくれるもの”です。考えてみれば、物語の登場人物も、本を書いた著者も、本がなければ絶対に出会えなかったであろう人たちです。そんな人たちと、時代も距離も越えて出会い、その考えに触れ、感性に触れ、魂に触れることができるなんて、素晴らしすぎる!そしてその出会いによって私は確実に、自分の考え、感性、魂に磨きをかけることができたと思います。本に感謝!
一人でも多くの子ども達に、この素晴らしさを伝えていきたいと思っています。

最後に“こいく文庫”の選定基準を。
子ども向け・・・私が思うに、大人が選ぶ本は面白みがなく、子どもが選ぶ本は内容に乏しい。そこで、大人としての自分と子どもとしての自分、両方の自分が満足するクオリティーの本を厳選しました。
最重視したのは、“ページをめくる手が止まらない面白さ”があること。本嫌いな子を本好きにさせ、
本好きな子を更に本好きにさせる、そういう本を選びました。また、その本が気にいったときに更に読み進めることができる、というメリットを考えて、シリーズ第一作を多く選んでいます。(というか面白い本は人気が出て続編が望まれるので、結果的にシリーズ第一作となることが多い) なお、ひとり読みの橋渡しとしたいので、大判の絵本は外しました。

保護者向け・・・こちらはとにかく内容重視で。私が読んで共感した本、薫陶を受けた本だけで固めていますので、若干(?)の偏りがあります。忙しい保護者の方でもサラッと読める読みやすい本が多いです。育児書は、幼児の保護者向けの内容が中心ですが、小学生の保護者が読んでも参考になりそうなものを選びました。教育書は、「家庭が塾化するのは望ましくない」という考えから、専門的すぎるものは外しています。どんなことであれ、親が自ら学ぶ姿勢を見せること、成長している姿を見せることで、子どもの向上心も育まれると思います。子育てについて学び、親として更に成長できるように、
“こいく文庫”を利用して頂ければ嬉しいです。

●こいく文庫(子ども向け)①

☆ あたまをつかった小さなおばあさん ☆ ホープ・ニューウェル

~小さなおばあさんは、たいへんびんぼうでした。もし、おばあさんが、これほどあたまがよくなかったら、おそらく、まいつき、お金のやりくりをすることができなかったでしょう。でもおばあさんは、あたまをつかうことにかけてはたいしたじんぶつでした…。~

1970年発行の名作。ユニークでおかしみにあふれ、ちょっと考えさせられて、最後は心がほっこり温まる、そんな素敵な一冊です。
一話完結の短いお話が8つ入っていて、寝る前に読んで
あげるのに最適です。すべて、小さなおばあさんが生活の
なかで遭遇した問題に“あたまをつかって”対処する、という
お話なのですが、その解決策がいちいちおかしい!
「え?それって…」と心配になりつつも、最後は必ず「わたしは、なんてまあ、あたまがいいんだろうねえ」とハッピーエンドに終わります。毎回、話の中盤に“あたまをつかう”場面がありますので、そのときに親子で「どうするんだろうね?」と
あれこれ想像して話しあったりするのも楽しそうです。

●こいく文庫(保護者向け)①

☆ ママの心がふわりと軽くなる子育てサプリ ☆ 佐々木正美

この5年ほど、数えきれない数の育児書を読み、“子育てに大切なこと”を沢山勉強してきました。
しかしいくら知識が増えても、実行できるかどうかは別の話。読んでいるときは「これ気をつけよう」と
思っていても、現実の我が子達がいつも本には書いているような反応をするわけもなく、そうなると
付け焼刃のマニュアルなんてどこかにポーン、感情のままに行動してしまうこともしばしば。

そんな私が「これだけは心に留めておこう」と常に自分に言い聞かせているのが、児童精神科医の著者、佐々木先生の次の言葉。
     「子どもの言うことをできるだけ聞いてあげよう。
      子どもの願いをできるだけかなえてあげよう。」
子ども達のためにも、ぜひ皆様に、佐々木先生の説得力に満ちた愛情溢れる言葉に触れてもらいたいです。数ある著書の中から、入門編として選んだのがこの一冊。イラストやマンガも入って非常に読みやすく、かつ佐々木先生の主張のエッセンスがしっかりと
詰め込まれています。気に入った方はぜひ「子どもへのまなざし」も読んでみてください。

●こいく文庫(子ども向け)②

☆ おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ ☆ ジャンヌ・ロッシュ・マゾン

~おそうじぎらいがもとで家を追い出されたリスは、オオカミに食べられそうになったときにも「おそうじだけはおぼえたくありません!」といいます。この国でいちばんえらいというオオカミは、そんなリスを食べるために…~ 

表紙の表情が物語るように、リスのゲルランゲはちょっぴり意地っ張り。いや、ちょっぴりどころじゃない!?
童話の主人公としては一風変わったキャラクターのゲルランゲがとっても魅力的で、本好きな子もそうでない子も、ぐいぐいお話に引き込まれること間違いなし!挿絵もいっぱい、これが振り回されるオオカミの悲哀を実にうまく捉えていて、いちいち笑えます。
読み聞かせで親子で一緒に楽しむのにも向いていると思います。ただし注意すべきは、読み始めたら止まらない!と
いうこと。一冊丸ごと読まされるはめになるかも…。
最後に、「掃除嫌いなうちの子に読ませて大丈夫かしら?」という方へ。大丈夫です。果たして結末は…? お楽しみに!