小学校における学習指導の問題点が、最初に浮き彫りになる1問として、こちらの問題をご覧ください。(どんぐり倶楽部の絵で解く算数文章題より)

問.あかいチューリップと しろいチューリップが あります。 あかは しろより 3ぼん おおいです。 あかは ぜんぶで 5ほんです。では、あかと しろを あわせたかずは なんぼんに なるでしょう。

 たし算とひき算ですから、1年生で習う内容なのですが、この問題が解けない2年生が非常に多いのです。ほとんどの子どもが深く考えることなく、3+5=8 として終わります。おそらく「おおい」=「たし算」という反応だと思われます(このように教えている先生が結構います)。単なるケアレスミスでは片づけられません。間違っていることを指摘しても、正答に辿りつけないのです。「よく考えよう」と促しても手は動きません。あるいは、5−3=2 で、あわせて2本、というありえない答えを出してきます。「たしてだめならひいてみよう」ということなのでしょう。問題は深刻です。

 要するに子どもたちは、徹底した計算練習やパターン問題の手順暗記はしていても、一番肝心な“問題解決の仕方”や“考える方法”を教わっていないのです。問題に向かう子どもたちの姿勢を見ていても、「しっかり考えて解いてやろう」という積極的な意欲が感じられる場合は稀で、「習ったようにやろう」という受動的な反応が圧倒的です。自ら考え新たな道を切り拓くどころか、「習っていない」「解き方を忘れた」という子どもも多く、目先の結果を重視した手順暗記型指導の悪影響を感じます。

 「低学年だから仕方ない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この傾向は学年が上がるとむしろ強まります。計算練習や手順暗記に費やす時間は増加する一方で、納得感を持てないままの勉強が続いた結果、計算問題とパターン問題は解けても、かけ算の意味・わり算の意味・分数の意味・割合の意味、こういったことが全くと言っていい程に理解できていない子どもが育つのです。

 小学校のテストではこの事実はほとんど顕在化しません。わり算を習った直後に、わり算の計算問題とわり算の文章題が並ぶだけの9割平均のテストでは、計算力以外の学力をチェックすることは不可能です。小学校のテスト結果だけを見て安心することほど危険なことはありません。入試などの選抜を目的とした6割平均のテストでは必ず“差がつく問題”が出題されます。表面上は“できる”けど実は“わかっていない”子どもは、そのような問題解決能力を求められる問題にはまず太刀打ちできません。塾で、中学校で、入試前にメッキのはげた真の学力を知り愕然とするケースが増えています。