小学校での学習内容は様々ですが、カリキュラムの中心に据えられているのが“知識の習得”であることは間違いないでしょう。しかし、情報量が飛躍的に増加した現代、“知識の習得”に代わって、自ら考え新たな道を切り拓く“問題解決能力”の重要性が増してきているように思います。

 問題解決能力を磨くためには“遊び”が有効です。遊びのなかでは、誰もが自然なかたちで工夫や試行錯誤を行っているからです。幼児期の自主的な遊びには「後に勉強を始めたときに花開く多様な思考モデルを育む」という効果があります。遊びと勉強を切り離して考えるのではなく「充分な遊びの延長に勉強がある」という認識が必要です。

 そして“算数”は、遊びによって身に付けた問題解決能力に磨きをかけるのに最も適した科目です。知識がなくとも考える力を武器に工夫と試行錯誤を繰り返すことで正答に辿りつける算数と、しっかり遊んできた子どもとは、本来とても相性が良いのです。

 しかし現実には、多くの子どもたちが、問題解決能力を磨くチャンス、遊びの経験を活かすチャンスを奪われてしまっています。これは言うまでもなく小学校での指導に原因があります。“考える力”よりも“読み書き計算”を重視する指導の結果、算数は子どもたちにとって「計算ドリルを黙々とこなすだけ」「意味を理解せずに手順を暗記するだけ」の科目になってしまっています。

 算数の本来の魅力と威力を知る私にとっては、悲しすぎる現実です。