明日の試験で結果を出すことだけを考えたとすると、一日で考える力はつきませんから「出題範囲と出題形式を分析して、解法を暗記するまでパターン演習をひたすら徹底反復させる」ことが最も効率的な指導、ということになるでしょう。実際、目先のテストを意識するあまり、このようなその場しのぎの勉強法を勧める教師や保護者が多数います。
 おなかがすいている子どもに、“魚を買って与える”ことは簡単ですが、あくまでもその場しのぎです。その子の将来を考えたら、時間がかかっても“魚の釣り方を教える”ことこそが大切です。

 特に小学生時代は、学習面での土台作りに集中しなければいけない、大変重要な時期です。
よく「できる」と「わかる」は別物と言いますが、この時期に「できる」を優先すると、本当はよくわかっていないのに手順だけ暗記するようになり、深く考えられない頭をつくることにつながります。
 中身の伴わない「できる」は長続きしません。伸び悩むのは確実です。深い納得感を伴う「わかった!」があってはじめて、本当の意味で「できる」ようになるのです。小学生の間に、いくつの「わかった!」を積み上げることが出来るかが勝負です。結果を気にして知識を詰め込む前にやるべきことがあるのです。
 考えること抜きに「わかった!」はやってきません。考える方法を体得して考える楽しさを知り、ひとつの問題について深く考え抜く力をつけることこそ、最優先すべき事柄なのです。

 目先の結果に振り回されない本質的な指導を実現するためには、保護者の方のご協力が不可欠です。私は塾講師として沢山の子どもと保護者と接してきましたが、「真の学力(=考える力)がある子どもの保護者には共通点がある」と常々感じていました。一言でいうとそれは“鷹揚であること”です。
 自分の子どもを信頼して、余裕を持って笑顔でドーンと構えている。結果を求めて勉強を強制したり、一回のテストに一喜一憂したりすることがなく、子どもの状況を温かく楽しんで見守っている。こんな保護者の方に恵まれた子どもは幸せです。健全な向上心を持って自分のペースで落ち着いて学習に取り組めるので、その場しのぎではない真の学力をじっくりと着実に養成していくことが出来ます。

 保護者の方にお願いしたいのは、自分を信じて、自分の子どもを信じて、指導者を信じて、目先の結果を求めず忍耐強くお子様を見守ってほしい、ということです。正しい道を信じて着実に歩めば、必ず結果は後からついてきます。
 一番難しいのは“指導者を信じる”という部分だと思いますが、ここが弱いと子どもの指導者に対する信頼も弱まり、学習効果は半減します。こいくでも、私の方で保護者の方に信頼していただけるよう、出来る努力は何でもいたします。納得して通ってもらえるよう、出来る限りの情報を公開しているつもりですが、他にも疑問点がごさいましたらお答えいたします。また、考え方の相違や指導の際に注意してほしいことなどおっしゃっていただけたら、出来る限りの対応をさせていただきます。
 [学び舎こいく]は、ひとりひとりをしっかりと見つめ、ゆっくりじっくりていねいに、一生の財産になる力(とことん考え抜く力)をつける指導をしていきます。

【始めに】 以下は〈年長のお子様をお持ちの保護者の皆様〉に向けて書いた文章ですが、
〈小学生のお子様をお持ちの保護者の皆様〉にも、ぜひ読んで頂きたい内容となっています。
前半がチラシの文章で、後半がその続きになっています。
『小学校入学前に“ウォーミングアップ”しておきませんか。』

 [学び舎こいく] は、<ゆっくりじっくりていねいに 〜slow life, slow study〜> をコンセプトに算数の文章題を絵を書いて解いたりする、ちょっと変わった学習教室です。

 本物の学力をつけるために小学校入学前にすべきことは、“先取り学習”よりもむしろ、“温かい目で見守られている安心感のなかで、自由な遊びに集中できる豊かな時間をたっぷり持つこと”だと思います。自由な遊びのなかで積み重ねた体験が、学力養成の土台となります。「ゆっくりじっくりていねいに」子どもらしさを尊重するのびのび子育てが一番! なのです。

 しかし、今、公立小学校の教育は、「ゆっくりじっくりていねいに」とは逆の方向に進もうとしています。表面的な結果を短絡的に求めるfast study の方向です。考える力をのびのびと伸ばすべき大切な時期に、機械的な単純反復の宿題(音読や漢字や計算)に追われるだけの日々を送る小学生が少なくありません。

 「何の結果も求められない幼稚園での生活」と「常に結果を求められる小学校での生活」とのギャップ、「遊び」と「勉強」のギャップは広がる一方です。
“ウォーミングアップ”とは、環境の大きな変化に戸惑い振り回され進むべき方向を見失うことのないように行う、ちょっとした“ひと工夫”です。
躍起になって知識の詰め込みをする必要はまったくありません。ひと工夫で「遊び」の延長として「勉強」を捉えられるようになるはずです。

 さて、ここからはウォーミングアップの内容についてです。大別して二種類あります。①保護者の皆様の行うウォーミングアップ と、②お子様の行うウォーミングアップ です。このページでは①について触れます。②については「ウォーミングアップ2」のページをご覧ください。
 小学校で、環境の大きな変化に戸惑い振り回され進むべき方向を見失うことのないように、まずは、保護者の皆様の “心のウォーミングアップ”を万全にしておくことが大切です。小学校入学前に、「将来どんな大人になってほしいか」そのために「小学校時代にどういうことを学んでほしいか」を、他人任せにせず、しっかりと考えておくべきだと思います。小学校の先生は、様々な状況にある相当数の子どもたちをひとりで(しかも全科目)指導するという困難を抱えています。たとえ学習面のことであっても、全てを任せきりにするのは酷というものです。

 ご存じの通り、2006年に世界的な学力調査(PISA)で大幅に順位を低下させたことから、「脱ゆとり教育」を求める声が高まり 2011年から学習量を大幅に増加させた新学習指導要領が実施されることとなりました。しかしその経緯において、国全体で「将来どんな国にしていきたいか、そのために小学生にどういうことを学ばせるか」という根本的な問題について、充分な議論があったでしょうか。最も大切な目標を曖昧にしたまま、結局は“テストの点数”という、それ自体には価値のないものを目標としているように思えてなりません。フィンランドは点数を目標としない教育をしているからこそ、PISAランキング1位になったのです。大局的な指導目標と指導方針を持たずに、目先の結果を追って“できる”を優先させた指導を小学生に行うことに私は反対です。どのようなものでも良いので、まずは家庭での指導目標と指導方針をはっきりとさせておくべきだと思います。

 目先の“できる”を実現させるには物量作戦が最も効果的です。理屈はともかく体で覚えさせる。
反復系の宿題を大量に出して鍛える作戦です。私は自分自身の指導経験から、幼児期に機械的な
単純反復作業をさせると“考えられない頭になる”と考えています。その意味では、将来的に我が子を「単純反復作業を考えることなく(不平不満をいうことなく)機械的に継続できる子に育てたい」という方には、物量作戦は大変効率的な指導法だと思います。意地悪な書き方ですが、勤勉で真面目な労働力を国全体が必要としていた時代には、このような指導法も理に適った部分があったのかもしれません。しかし時代の変化にも関わらず、小学校で出される漢字練習や計算ドリルの宿題量は、おしなべて増加しているのです。

 ですから、時代の変化を捉えたうえで、「自ら考える力や問題解決能力のある子を育てたい」というのであれば、小学校とは別に、家庭独自の判断基準を設けておくことが必要だと思います。その場合、教育に関する方向性が、担任の先生とずれてしまうことも十分考えられますが、意見を尊重しあいながら話し合いを重ねて、子どもにとってベストの教育を模索することはお互いにとって意義のあることだと思います。ただ、最終的に子どもを守れるのは、言うまでもなく保護者の皆様です。

 子どもを守る手法として四点をお勧めします。
①「将来どんな大人になってほしいか、そのために小学校時代にどういうことを学んでほしいか」を子どもに伝え、その基準で子どもを評価する。テストの点数や通知表の評価に振り回されない。
②楽しみながら、ゆっくりじっくりていねいに学習する習慣を身につけさせる。これを阻害する宿題に関しては、担任の先生と交渉して変更あるいは免除してもらう。
③学力養成の土台となる“遊び”(テレビ・ゲームを除く)の時間をしっかり確保する。
④考える力をつけるために“絵で解く算数文章題”に取り組む。
 ※③と④については、「ウォーミングアップ2」のページに詳細を載せています。

 常に結果を求められる小学校での生活の中で、のびのび子育てを実践していくのは簡単なことではありません。我々親の世代の小学生時代とは状況が違うのです。溢れる情報のなかから自分が進むべき道を選び取るのは難しく勇気のいることですが、深く考えることなく周りに流されて大通りを進むことには、大変な危険があることを知ってほしいと思います。このHPで、小学生の学習に関する危険について興味を持った方、もっと詳しく知りたいという方には、どんぐり倶楽部の糸山泰造先生の著書「12歳までに絶対学力を育てる学習法」をお勧めします。また、ご質問やご相談などがございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。