⑤久留米付設中学校

【2011年度】
 さすが福岡県きっての名門校、多数のアイデアを詰め込んだ独創的な入試問題です。同日入試で同じく“九州の雄”であるラ・サール中と比較しても、型にはまらないユニークな問題が目立ちます。
ただ大濠同様、ちょっと詰め込みすぎな気が…。特に大問はせっかくよく練られた力作が多いのに、合格最低点(6割強)と制限時間の関係で考えると、後半(3)以降が、いわゆる“捨て問”となってしまうのがもったいない…。受験生の立場で考えると、じっくり味わうというよりは、取り組む問題の選択も含めて機械的にテキパキと処理していくことが求められます。じっくり味わいたいなら、難易度・問題量ともに絶妙なバランスのラ・サール。一見地味でシンプルですが、周到にパターンを外しており、考える楽しさと正答までの道筋の美しさが存分に味わえます。特に図形問題にはいつも感心させられます。
 さて附設の対策です。幅広い知識が必要ですが、大問の出題分野には偏りがあります。ここ10年の大問の出題率ベスト5を調べてみました。(今年の大問5題はベスト5と見事に一致していました。)
 1位【立体図形】半数以上が切断の問題です。与えられた見取り図に正確に書きこむことができるかがポイントです。2位【速さ】時系列に状況を整理する必要がある問題が目立ちますので、速さのグラフ(ダイヤグラム)を書く練習が有効です。3位【場合の数】ほとんどの問題が図形と絡めて出題されています。モレやダブリがない調べ方を考えてから書き出していく必要があります。4位【平面図形】回転移動の出題が非常に目立ちます。正確な軌跡を書けるかがポイントです。5位【規則性】ルールに従って書き出していくことで規則を発見させる、というのがいつものパターンです。前半で調べ、後半は計算します。 …ということで、ベスト5全てにおいて“書くこと”が要求されています。“手作業を迅速かつ正確に行えるか”が附設攻略の最重要ポイントだと思います。算数に自信がないと、時間に追われた状況で冷静にこなすのは難しそうです。スッキリいかない計算も多く、メンタルタフネスが試されます。
【2012年度】
 例年以上によく練られた良問が並ぶセットで、スタートからラストまで、じっくり考えさせられる問題が続きます。ただ…なにも“スタートからラストまで”にしなくても…。“詰め込みすぎ感”は例年以上で、やっぱり「もったいないな〜」と思ってしまいます。県内では群を抜いて“時間をかけて味わう価値がある入試問題”であることは確かです。
過去問に一工夫を加えたような問題が多いので、過去問をしっかりと理解すること(なんとか解けるレベルではなく、周辺知識も併せて深く理解すること)が非常に大切です。上に挙げた出題率ベスト5で言うと、“切断”や“回転移動”、書き出しの必要な“規則性”など、お馴染の単元がバージョンアップした形で今年も出題されました。今年は珍しく“速さ”が出題されませんでしたが、来年は必ずや出題されるものと思われます。受験勉強の王道は“苦手分野を作らない”勉強法だと思いますが、入試問題の質から考えると、同校に関しては“得意分野を伸ばす”勉強法も有効だと思われます。