小学校で、環境の大きな変化に戸惑い振り回され進むべき方向を見失うことのないように、まずは、保護者の皆様の “心のウォーミングアップ”を万全にしておくことが大切です。小学校入学前に、「将来どんな大人になってほしいか」そのために「小学校時代にどういうことを学んでほしいか」を、他人任せにせず、しっかりと考えておくべきだと思います。小学校の先生は、様々な状況にある相当数の子どもたちをひとりで(しかも全科目)指導するという困難を抱えています。たとえ学習面のことであっても、全てを任せきりにするのは酷というものです。

 ご存じの通り、2006年に世界的な学力調査(PISA)で大幅に順位を低下させたことから、「脱ゆとり教育」を求める声が高まり 2011年から学習量を大幅に増加させた新学習指導要領が実施されることとなりました。しかしその経緯において、国全体で「将来どんな国にしていきたいか、そのために小学生にどういうことを学ばせるか」という根本的な問題について、充分な議論があったでしょうか。最も大切な目標を曖昧にしたまま、結局は“テストの点数”という、それ自体には価値のないものを目標としているように思えてなりません。フィンランドは点数を目標としない教育をしているからこそ、PISAランキング1位になったのです。大局的な指導目標と指導方針を持たずに、目先の結果を追って“できる”を優先させた指導を小学生に行うことに私は反対です。どのようなものでも良いので、まずは家庭での指導目標と指導方針をはっきりとさせておくべきだと思います。

 目先の“できる”を実現させるには物量作戦が最も効果的です。理屈はともかく体で覚えさせる。
反復系の宿題を大量に出して鍛える作戦です。私は自分自身の指導経験から、幼児期に機械的な
単純反復作業をさせると“考えられない頭になる”と考えています。その意味では、将来的に我が子を「単純反復作業を考えることなく(不平不満をいうことなく)機械的に継続できる子に育てたい」という方には、物量作戦は大変効率的な指導法だと思います。意地悪な書き方ですが、勤勉で真面目な労働力を国全体が必要としていた時代には、このような指導法も理に適った部分があったのかもしれません。しかし時代の変化にも関わらず、小学校で出される漢字練習や計算ドリルの宿題量は、おしなべて増加しているのです。

 ですから、時代の変化を捉えたうえで、「自ら考える力や問題解決能力のある子を育てたい」というのであれば、小学校とは別に、家庭独自の判断基準を設けておくことが必要だと思います。その場合、教育に関する方向性が、担任の先生とずれてしまうことも十分考えられますが、意見を尊重しあいながら話し合いを重ねて、子どもにとってベストの教育を模索することはお互いにとって意義のあることだと思います。ただ、最終的に子どもを守れるのは、言うまでもなく保護者の皆様です。

 子どもを守る手法として四点をお勧めします。
①「将来どんな大人になってほしいか、そのために小学校時代にどういうことを学んでほしいか」を子どもに伝え、その基準で子どもを評価する。テストの点数や通知表の評価に振り回されない。
②楽しみながら、ゆっくりじっくりていねいに学習する習慣を身につけさせる。これを阻害する宿題に関しては、担任の先生と交渉して変更あるいは免除してもらう。
③学力養成の土台となる“遊び”(テレビ・ゲームを除く)の時間をしっかり確保する。
④考える力をつけるために“絵で解く算数文章題”に取り組む。
 ※③と④については、「ウォーミングアップ2」のページに詳細を載せています。

 常に結果を求められる小学校での生活の中で、のびのび子育てを実践していくのは簡単なことではありません。我々親の世代の小学生時代とは状況が違うのです。溢れる情報のなかから自分が進むべき道を選び取るのは難しく勇気のいることですが、深く考えることなく周りに流されて大通りを進むことには、大変な危険があることを知ってほしいと思います。このHPで、小学生の学習に関する危険について興味を持った方、もっと詳しく知りたいという方には、どんぐり倶楽部の糸山泰造先生の著書「12歳までに絶対学力を育てる学習法」をお勧めします。また、ご質問やご相談などがございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。