●算数つまづきポイント解説〈2年生〉

《2年生の算数つまづきポイントは、“大きな数”。 筆算のやらせすぎには注意。ゆっくり徐々に。》

小学校では、2年生から“大きな数”の学習が始まります。
2桁+1桁、2桁-1桁、2桁+2桁、2桁-2桁、これらについて考えていくのですが、最初からいきなり筆算させるのではなく、“10の固まり”を用いることで、子ども達が実感しやすい説明がなされます。
(教科書では、10本の棒が束になったイラストなどが用いられることが多いようです)
37+4であれば、⑩⑩⑩ ①①①①① ①① と ①①①① という形に表すことで、7+4の応用となり、
43-5であれば、⑩⑩⑩⑩ ①①① と ①①①①① という形に表すことで、13-5の応用となります。
多少時間がかかったとしても、1年生で学習したことを応用しながらよく考え、正しい答えを導き出すことが求められます。(第1ステップ)

その後(他の単元をいくつか挟んだ後)、筆算の学習が始まります。ここで初めて、子ども達は“数字を縦に並べて計算する手法”を習います。上記したような2桁のたし算とひき算を、速く正確にできるようになるまで、繰り返し練習します。(第2ステップ)

この過程に、“算数つまづきポイント”が存在するのですが、つまづきを起こす真の原因は、前回1年生の記事で書いたことと同様です。そう、「第1ステップが未だ曖昧で深い認識に至ってないにも関わらず、第2ステップの練習を徹底反復し過ぎること」です。「第2ステップのやり過ぎ・やらされ過ぎ」により、本来なら、ゆっくりと徐々にでも、深度を深めていくはずであった第1ステップの理解(理解しようとする脳の働き)が、途絶えてしまうのです。

もちろん、2年生全員がそうなる訳ではありません。“筆算の意味”の説明も、最初は実感を伴えるように、イラスト付きで丁寧に行われますから、“1年生の学習内容”と“第1ステップ”を深い理解と共に終えている子は、そこで「なるほど~」と意味を理解したうえで、筆算練習に入ることができます。そして、練習を重ねる中で、その意味の理解を更に強化していきます。

しかし、こうなる子は稀です。年齢的に、理解のスピードには大きな個人差があります。更に、保護者も先生も気づいていないケースがほとんどですが、「すでに(1年生のときに)“最初の致命的な算数つまづき”が起きている」子どもが多数います。1年生後半の“さくらんぼ計算”のやり過ぎなどで、具体物の世界から断絶されてしまっているのです。 “大きな数”の学習内容をしっかりと理解していくためには「20までの数字の和・差について、実感を伴ったかたちで、深く理解している」ことが必須条件となります。しかし、この条件をクリアしている子は(大人が思ってる以上に)少ないと思われます。

繰り上がりや繰り下がりについて、実感を伴った深い理解ができていないので、筆算しても計算ミスが沢山でます。練習しない時期が少しあると、すぐにやり方を忘れます。2年生も後半に入ると、2桁だけでなく、3桁の数で筆算練習が始まりますので、混乱はますます深まります。担任の先生も保護者も、何とかしてあげたくて筆算練習の量を増やしますが、その対策は意味を成しません。徹底して反復させれば、その場では正解数が増えテストの点数も上向くかもしれませんが、深い理解からはますます遠ざかっているのです。「反復練習で(実のところわかってないけど)できるようにさせられてる」だけです。真の問題は解決していません。隠蔽されただけであり、危機状態は深まっているのです。長い目で見ると、むしろ害、と言える間違った対応だと思います。

本来、ここで筆算練習はいったんストップすべきです。もう一度、具体物の世界に立ち戻り、指や絵を使って数え、考えることから始め、20までの数字の理解に時間を費やすべきです。その後、上記した第1ステップの理解をゆっくり徐々に深めて、それが確認できたら、また筆算練習を再開すればよいのです。時間のかかる方法に思われますが、深い理解に至るまでは、時間が必要なのです。これが王道ですし、「意味も分からず反復させられる時間、つまり無駄に費やす時間がない」という意味でも、実は長い目で見れば、一番の近道でもあるのです。

しかし、「小学校において、そういう対応が為されることは、まずない」と言ってよいでしょう。ですから、保護者の果たすべき役割は重要です。一段落前に書いたような対応がベストだと思いますが、できない場合も多いと思います。それなら少なくとも、筆算練習の負担を減らしてあげるような努力をしてもらえると助かります。宿題でやるべき筆算を、なくしたり減らしたりすべく、担任の先生に交渉してください(上手な交渉方法は私に聞いてください)。そこを変えられない場合は、本人の負担が減るような声がけをお願いします(これも私に聞いていただければ状況に応じてアドバイスいたします)。

第1ステップの理解をいかにして促進するか、ですが、これについては保護者があまり熱心に働きかけすぎると、本人のペースで、“ゆっくり徐々に”理解することを阻害してしまいますので、時間が解決するのを待つ、という姿勢でも良いと思います。苦手にあまりフォーカスしすぎず、それにより自信を失ってしまうことがないように、本人が楽しく日々を送れるような接し方をしてもらえれば、それでよいと思います。信じて待つことが肝要です。(もちろん教室では、絵を使った理解の促進を図っています)

“ただ待ってるだけ”は苦しい、という方は、生活の中で具体物を数える機会を意識して作るといいと思います。しかし“大きな数”を具体物で、となると、場面が限定されるはずです。「公園でドングリを沢山いっしょに拾いまくって、数えてみよう、となって10ずつ固まりにして数えて、そこから~個をお友達にあげると残りは…」な~んて機会を多く作れるとよいのですが、なかなか難しいと思います。

“大きな数の固まり”に実際に触れる機会の少なさを考えると、最も使えるのは、“おこづかい”や、“おかいもの”ということになると思います。例えばうちは、二週間に一回、“おこづかいの日”があり、1年生の次女には20円、2年生の次男には30円、4年生の長女には50円をあげてます。(お手伝いをサボり過ぎた場合もらえないこともあり。笑) うちは周りにお金が使える場所がないので、こ~んな少額でも貯まっていくことが多いようで、何かあるたびに財布を引っ繰り返して、10・20・30…と嬉しそうに数えています。“おかいもの”についても、自分の買い物(滅多にないから超真剣)はもちろん、妻の買い物に付き合うことも多いので、そのたびに、「いくら払ったからおつりは…」といったようなことを、年齢に応じて、妻と会話しながら理解をしていってるようです。自分のお金を自分で管理させることは、 (他の様々な教育的効果に加え)算数の学習としても効果があるように思います。お勧めです。

教室で見ていると、筆算学習をすでに終わらせていて、2桁・3桁の筆算は普通にできているのに、“大きな数”をきちんと数えられない子がけっこういます。10・20・30…90・100、まではいいのですが、その次を110・120、とできず、…90・100・200・300としてしまうのです(900・1000、の次も同様です)。これでは「大きな数の基本中の基本がわかってない」と言わざるを得ません。機会があったら、このあたりをチェックしてみると、第2ステップに進んでよい状態かどうかの判断材料になると思います。