●算数つまづきポイント解説〈1年生〉

タイトルの通り、算数で特につまづきやすいと思われるポイントを、各学年1つずつ挙げていきたいと思います。全6回のシリーズ連載となります。 (いつものように更新はスローペースです。早く内容が知りたいという方は、その旨をお知らせください。口頭でお伝えします。)

《1年生で特に大切なのは、追い立てないこと。ゆっくり徐々に数の世界に慣れさせること》

この時期の子どもは、具体物で世界を認識しています。具体物とは指さして数えられるものです。
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白と黒をあわせると(ぜんぶ数えると)11個になる。黒から4個を取ると3個になり、3個を取ると4個になる。黒は白より3個多い、白は黒より3個少ない。白と黒は3個差。…といったことを、具体物を見ながら、言えるようになることが大切です。(第1ステップ)

実際の具体物(もしくは絵・おはじき・指など)でないと最初は考えられないはずです。ですから、その時期を大切にしてあげてください。もちろん、徐々に抽象化された、記号化されたレベルで数を扱えるようになることも必要です。小学校の算数の授業では、その練習が行われています。“4・7・+・-”などの記号を使って、上記のような認識ができるよう、働きかけています。(第2ステップ)

しかし、急がせるのは禁物です。“❀❀❀❀✿✿✿✿✿✿✿ぜんぶで11個”を、“4+7=11”に、置き換えて認識できるようになる時期には、個人差が大きくあります。更に認識には深度があります。深く納得すること、しっかり腑に落ちる、ということが大切です。「いまだに指をつかっている」というのは、認識を深めている最中だからです。焦り追い立て、その邪魔をしないことが大切です。小学校の先生の中には、ある時期が来たら「指を使わないように」と指示する方もいらっしゃるようですが、おうちで宿題をやるときなどは、本人が納得して自然と卒業するまで、具体物を使うことをお勧めします。

「第1ステップは大丈夫だけど、第2ステップになると全然ダメ」、この状態で「いきなり算数につまづいてる?」と思って焦らないでください。違います。本当の、“最初の致命的な算数つまづき”とは、「第1ステップが未だ曖昧で深い認識に至ってないにも関わらず、第2ステップの練習を繰り返し行い過ぎて、具体物“❀❀❀❀”と抽象概念“4”との繋がりが切れてしまっている」状態です。第2ステップのやり過ぎ・やらされ過ぎで、深度を深めている過程にあったはずの第1ステップの認識が、完全に途絶えてしまうのです。

このような“危機状態”の恐ろしさは「それが見えにくい」ところにあります。小学校のテストでは、第2ステップしか試されないからです。第1ステップとの繋がりが切れていて、実のところ納得できてない、腑に落ちてない、つまりわかってない状態でも、第2ステップの練習だけ反復していれば、テストの点数はとれたりするのです。(少し違う角度から攻めてくる応用問題はとれませんけどね。でも、1年生のテストでそんな問題ありますか?ほぼ全て、反復練習の確認だけです。) ですから、程度の差こそあれ、このような危機状態に陥っている小学生は、実は沢山いるのです。

テストである程度できていれば、「わかっているからできた」と普通は思うでしょうが、「反復練習で典型題だけは(実のところわかってないけど)できるようにさせられてる」だけだったりするのです。もちろん応用題は解けません。中学受験塾で行われているような、平均が6割くらいのテストだと、全くとれません。しかし小学校のテストの点数だけではなかなかわかりません。“危機状態”が点数として姿を現すのは、2年か3年か4年たってから、ということも多いです。確実なのは、学年が上がるにつれ、対応しきれず理解の浅さが浮き彫りになっていく、ということです。

「~年生になって算数が難しくなってきたみたいで…」と体験授業に来た子の理解深度を、“絵で解く文章題”で見ていくと、「すでに1年生のときに“最初の致命的な算数つまづき”が起きている」と判明することも、多々あります。判明した時にはすでに手遅れ、とまでは言いませんが、そこから、具体物と抽象概念の橋渡しを絵図によってやり直し、これまで教わってきた(けど本人はほぼ理解できてないし、本人も周りも理解できてないことを理解してない)様々な内容を、深い理解に繋げていくのは、まぁなかなかに大変な作業です。“1年生のときは第2ステップに少し苦労したけど気にしすぎず待っていたら繋がり始めて今では教わること全て深く理解している”同学年の子と比べてしまうと、扱える問題レベル(それにより鍛えられる思考力)には、正直かなり差があります。

以上のような理由で、1年生のうちは、しっかりと“具体物の世界”を味わわせてあげてほしいと思います。“ただ待ってるだけ”は苦しい、という方は、生活の中で具体物を数える機会を意識して作るといいと思います。簡単でオススメなのは、“3時のおやつ”。うちの4人の子ども達は、皆おやつに対しては真剣なので、皿にわけるときも「どれが何個多い」とかワイワイやってます。次女(1年生)は特に数をごまかされて損しないように真剣です(笑)。

たし算とひき算が、具体物の世界とスムーズに結びついているような子でも、「4と7、どっちがいくつ多い?」みたいな問題については、式が出てこないことが多いようです。(無理に式にしようとして、4-7=…で困ったり。笑) これも、本人がどこかで納得するまでは、「7が多いのはわかるけど…」で、指や絵を比べてやっとわかる、という感じで良いと思います。もちろん小学校では「こうこうこういう理由でひき算になるよね」と説明を受けるので、式を使って答えを出せる子もいますが、第2ステップができていても、第1ステップの理解が怪しいようでは困るので、おやつが目の前にある状態で同じような質問をしてみて、第1ステップとしても腑に落ちているか確かめてみるといいかもしれません。

もしイマイチわかってないような場合も、教え込まないでください。さらっと見本を見せて終わってください。(さりげな~く比べやすいように並べて、「あっ、こっちが3個多いみたいね」という感じで。)そして、機会を増やしてください。(しかし増やし過ぎると「おべんきょう?」と警戒されるのでほどほどに。笑)一桁どうしの差が(計算でなく具体物を比べて)出せるようなら、9と13など、一桁と二桁でもやってみるといいと思います。無理してやる必要はありませんよ。追い立てないように。ゆっくりと徐々に、慣れていけばいいんです。信じて、待つことが肝要です。