●さよなら春風荘

2016年も残すところあと数日。今年も色々ありましたが、教室に関することだと、やっぱり“春風荘からの移転”が印象に残る年でした。取り壊しの通知は突然でしたが予感があったのも事実。このブログでは、“歴史の重みを感じるアンティークな教室”な~んて書いてましたが、実際、ボロかったですからね(笑)。コンクリがひび割れて所々崩れた二階への階段を登りながら「ここでいつまでできるんだろ…」と思うこともしばしば。取り壊しが決まったときの保護者の反応も、「やっぱり」的なものが多く…(笑)
そんなボロい場所に大切なお子様を預けていただき、皆様ありがとうございました! 感謝の気持ちを込めて、忘却の彼方に消える前に“今だから明かせる春風荘エピソード”を書き記しておきます。

<春風荘エピソード1:初授業の日に>
古いアパートで気になるものと言えば、やはりあの、部屋の隅をサササッと動く茶色いアイツ。しかし、
一切目にすることなく無事に初授業の日を迎え、「いいぞ~みんな集中してる、いい感じ!」でその日を終えそうな時間帯でした。一人の女子がトイレに行くために部屋を出た直後、「きゃっ!」 そこに
アイツがいたのでした…。瞬間、「なぜこの日この時に!」という苛立ちと「やはりいるのか…」という
絶望感が沸き上がりましが、隣の部屋の子ども達はまだ気づいていません。しらっと冷静を装い、
素早くそのへんの紙を丸めてパシッと仕留め、シュッとその紙で掴んで、ジャーッとトイレに流す。
一連の動作を自分でも驚くほどスムーズに済ませ、最後に女の子にニコッ。「頼むから他の子たちに
ゴキブリでた!とか言わないで~」と心で念じながら、「もういいよ♪」と作り笑顔を向けたのでした…。
※ありがたいことにその後、アイツが登場して焦るのは年に一回もないくらいのペースでした。

<春風荘エピソード2:傾いてました>
それは初めて不動産屋さんと部屋に入ったときのこと。すでにそのとき「ん?なんだか…」と感じてはいたのです。しかし人間、抜群に気に入ったモノがあれば、少々のマイナスには目をつぶりたくなるもの。「いやいや気のせい気のせい」と頑張って自分に言い聞かせている最中に、妻が一言「ねえここちょっと…傾いてない?」「…。」 しかし、「うん…まあそんな気がせんでもないねえ」と軽く流すことに成功し、疑惑は明らかにされることなく入居決定、一旦慣れてしまうとそこはもう一切気にならなくなったのでした。ただ、おそらく初めて授業に参加した子、初めて面談で教室に入った保護者の方、同じように「ん?なんだか…」と感じた人は多かったのではないかと推測します。その違和感、正解でした。ある日、ビー玉を部屋の真ん中に置いてみたら、何度やっても同じ方向に転がっていきました。

<春風荘エピソード3:吊り橋効果>
吊り橋効果とは、吊り橋の上のような不安や恐怖を強く感じる場所で出会った人に対し、恋愛感情を抱きやすくなる現象のこと。春風荘は住居用のアパートでしたので、他の部屋には普通に人が住んでました。年配の方ばかりでした。それもあってか、部屋前の廊下に置かれたモノが、何というかやけに年季が入っていてホコリかぶっていて…古いアパートということもあり、見方によってはちょっと怖い。しかし学び舎こいくは二階奥にあるため、そこは避けて通れません。天気の良い日はともかく、薄暗い夕方に、フタのない古い洗濯機がズズーッと回る廊下を通り抜けるのは、ちょっと勇気がいる感じ。
新参者にはハードルが高い入口でした。見かねた妻に「置きっ放しの物とか片付けてもらおうよ」と何度か言われましたが、私の意見は違いました。「いや、このハードルの高さがいいんよ。ここを恐る恐る通り抜けたあと教室の中に入ったら、この古い部屋がなんかキレイに見えて安心するやろ。それが狙い!」 今思い返して、「前の教室わりと好きだった」と思えるあなた、それは吊り橋効果かも…。

以上、春風荘エピソードでした。いや~こうやって思い出してみるとやっぱり面白い場所だったな~。
なくなって残念。そんな春風荘びいきの私ですが、今の長丘の教室も思ったより気に入っています。たぶん自分でDIYして作り上げた部分が大きいので、そのぶん愛着が湧くのだと思います。虫も全くいないし傾いてないし吊り橋効果もない新教室ですが、たぶんそれって利用する人にとっては良いことだと思うので(笑)、グレードアップした学び舎こいくを、来年もよろしくお願いします。